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NBニュース キヤノンの野望に立ちはだかる男  SEDの命運を握るCEOが語る攻防戦

NBニュース キヤノンの野望に立ちはだかる男  SEDの命運を握るCEOが語る攻防戦 [1/2](日経ビジネスオンライン) - goo ニュース


NBニュース キヤノンの野望に立ちはだかる男  SEDの命運を握るCEOが語る攻防戦 [1/2]
2007年4月22日(日)09:00

 新しい薄型テレビ技術「SED(表面電界ディスプレー)」で悲願のテレビ事業参入を目指すキヤノンに大きな障害が立ちはだかっている。

 今年2月22日、米テキサス州西地区連邦地裁でのこと。キヤノンのSEDテレビ生産に欠かせない技術特許の使用権が、この日の略式判決によって使えなくなってしまった。この裁判の原告は、ナノテクノロジーのベンチャー企業、米ナノ・プロプライアタリー。被告はキヤノン。

 一審判決は、4月30日に下る予定だが、同様の内容となれば、SEDテレビ計画は大きなダメージを受けることになる。ナノに歩み寄る形で特許料を支払うのか、あるいは事業の大幅な見直しか…。

 「判決がキヤノンにとって好ましくなければ、控訴して争う」

 3月の株主総会の席上で、キヤノンの内田恒二社長は、SED事業の遅れを懸念する株主の声に、そう答えた。だが、法廷闘争が長引けば、それだけSEDテレビの実現が遠のいてしまう。

 崩壊した青写真 。

 当初の予定では、既にSEDテレビが店頭に並んでいるはずだった。東芝と折半出資の合弁会社「SED」を立ち上げたのは2004年のこと。早ければ2005年にも、生産を開始する予定だった。ところが、2005年4月にナノが裁判を起こしたこともあり、事業計画は崩れ、今年に入って東芝との提携は解消されてしまった。

 キヤノンの野望を打ち砕いた形となった米ナノ。そのトップに、法廷闘争の真意を聞こうと、米南部に飛んだ。


CEOはGE出身


ナノの「再建請負人」として期待される
トーマス・ビジューCEO

 テキサス州オースティン。ダウンタウンからクルマで10分ほど走ると、緑が生い茂る郊外の風景が広がる。そこに、従業員38人の米ナノの本社ビルがあった。1階建ての小さな建物だが、中に入ると、壁一面に特許の証明書が飾ってある。規模こそ小さいが、研究開発企業として、ナスダックにも上場している。

 受付で取材に来た旨を伝えると、10秒ほどでCEO(最高経営責任者)が飛び出してきた。現れたのはトーマス・ビジュー氏、56歳。スポーツマンタイプのがっちりした体格で、話がのってくるとおおげさなジャスチャーも交える。威圧感すら感じさせる米ゼネラル・エレクトリック(GE)出身のトップは、まず、大学の研究室にも似た施設を案内してくれた。そして、キヤノンとの特許紛争について口を開いた。

 「我々は小さいながらも研究開発企業であり、(特許権を濫用して大企業に莫大な賠償金を吹っかける)パテントトロールではない。キヤノンとは、1999年3月に、当社が持っているSED関連特許の使用権に関する契約を結んだ。その時、キヤノンが支払った特許料は550万ドル(約6億6000万円)。もちろん、我々も満足できる内容だった。だから、キヤノンが契約さえ破らなければ、『使用権剥奪』なんていう事態にはならなかった」

 キヤノンは契約違反をしたとナノは主張する。

 ナノによれば、そもそもキヤノンはこの時に支払った特許料で、未来永劫、この特許を使用できることになっていた。それは、キヤノンの子会社にも適用され、無償でこの特許を貸与できる権利まで手にした。


合弁会社が命取りに

 ところが、この「子会社」をめぐって、問題が勃発することになる。問題の子会社はSED。この会社のSEDは、共同で開発してきた東芝と2004年に日本で設立した合弁会社だ。キヤノンはこの合弁会社を「子会社」と位置づけた。キヤノンは東芝より1株だけ多く保有することで、出資比率を50.002%としたのだ。

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NBニュース キヤノンの野望に立ちはだかる男  SEDの命運を握るCEOが語る攻防戦 [2/2]
2007年4月22日(日)09:00

 ところが、裁判所が公表した文書によれば、キヤノンと東芝はSED設立に当たって、SEDの運営は両親会社のコンセンサスを基にして行うことを確認しているという。取締役や監査役も、両社が同じ人数を選任して送り込む。重要な決定事項は、両社の合意を必要とする。

 つまり、両社の議決権は実質的に50対50と言える構図になっていたわけだ。1999年以来、キヤノンは東芝とはSEDの共同開発を続けてきた仲だけに、相手の顔を立てる形となった。これが結果的に仇となった。


ナノの本社、正面玄関前

 米ナノとの契約書には、「子会社」の定義がこう記されている。「発行済み株式の50%超を直接的または間接的に保有し、これら株式が総会での議決権を付与されている」。

 SEDの議決権を東芝と対等にしたことが、契約違反と取られたわけだ。ナノは2005年4月に提訴に踏み切っている。「SEDはキヤノンの子会社と認められない。従って、特許を無償で使用する権利はない。明らかな契約違反なので、使用権を剥奪する」というわけだ。

 法廷では、今のところナノの言い分が通っている。「死んだ魚は泳がない。死んだ犬は狩猟しない。議決権を持たないキヤノンの1株は、死株も同然だ。合弁会社を『子会社』と見なすのは無理がある」(テキサス州西地区連邦地裁の担当判事、サミュエル・スパークス氏)。

 ナノのビジューCEOは続ける。

 「キヤノンとは、1999年に契約してから、ほとんど連絡を取り合ったことがなかった。それだけに、彼らがなぜ、あのような行動に出たのか分からない。当初は、東芝とも特許契約を結ぶことで解決しようと持ちかけたが、物別れに終わってしまった」


ナノ、もう一つの裏事情

 「その時に東芝に提案した契約内容は、キヤノンのものとは違う。東芝は、ディスプレー製造の第一人者なのだから、契約条件が違って当然だ。そもそも、(キヤノンと締結したような)1回支払ったら永久に特許を使える契約はもうやめることにした。東芝に提示した内容もそうだったが、売り上げに応じた特許料を支払ってもらう。また、市場規模に応じた最低限の年間保証金を求めていく」

 法廷闘争の裏側には、ナノの戦略転換がある。1987年の創業以来、年間で黒字を達成したのは1期だけ。慢性的な赤字体質となっている研究開発型企業の収益力を向上させるため、ビジューCEOはビジネスモデルを変えようとしている。

 そんな折、巨額のキャッシュフローを生み出す高収益企業、キヤノンとの薄型テレビに関する契約闘争は、「狙い目」だったに違いない。本来ならば、もう売り切ってしまった特許使用権だったが、図らずもキヤノンが「契約違反」を犯してくれた。そして、略式判決でもナノが優位に立った。

 だからこそ、ビジューCEOは、この機を逃さず、キヤノンとの再契約を結ぼうと躍起になっている。優勢な状況に株価も反応している。ナノの株価は略式判決後、約2倍に跳ね上がった。

 一方、キヤノンは追い込まれた格好だ。SED設立から2年が経つが、まだ発売のメドが立たない。そして、今年になって東芝はSEDの株式をキヤノンに譲る形で、提携を解消してしまう。

 「共同生産の提携を解消したのは、キヤノンが特許問題を抱えているため。これが解決しないと次に進めない」

 4月12日、東芝の西田厚聰社長は中期経営計画発表の席上で、そう打ち明けた。


岐路に立つキャノン

 注目の一審判決は近づいている。4月30日の当日、キヤノンは米テキサス州に総勢12人の弁護士を送り込むという。ここで、逆転の判決を勝ち取らないと、キヤノンはさらに追い詰められる。もし、厳しい判決が下った場合、キヤノンは法廷闘争を続けるのだろうか。

 「この問題を、キヤノンが法廷で解決しようとしていることには、本当に驚いている。私個人から御手洗冨士夫会長に書簡を送って、交渉による和解を考えるようにお願いしてきた。ところが、キヤノンは拒否し続けている。なんで、我々と会ってくれないのか理解できない。まあ、独占使用権を他の企業に与えない限り、我々はいつでもキヤノンと交渉する用意がある」

 キヤノンとの交渉を願っているビジューCEOだが、他社の動き次第では、展開は変わってくる。独占使用権を与えてしまえば、キヤノンはさらに厳しい局面を迎える。そんな折、韓国のサムスンが米ナノに接触しようとしているとの噂も囁かれる。

 2010年に18兆円市場になるとも言われる薄型テレビ市場。数少ない有望な家電マーケットだが、キヤノンは参入する前からつまずいてしまった。そして、判決次第では、厳しい決断を迫られるかもしれない。


(ニューヨーク支局 木瀬 武)

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  by super_shinka2 | 2007-04-23 09:50 | 物理

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